【エストニア滞在記23年夏】大使館と訴え

これは少しばかりヘビーな話かもしれません。

 

 

エストニアの首都タリンには旧市街があります。
その旧市街の中にはエストニアの国立機関、ホテル、お土産屋さん、カフェ、レストランそして各国大使館があります。
ラエコヤ広場から一本入るとエストニアで最も古いカフェ、Maiasmokkがあります。
この話はそのMaiasmokkの向かい側に建つロシア大使館の話。

 

この1年半もの間、世界は大きな衝撃に見舞われました。
現代において、なし崩しの文化粛清ではなく、堂々とした(?)侵略戦争が起こるとは思いませんでした。
それも数週間で諦めるのかと思いきや、泥試合を始めてしまい、もはやいつ第三次世界大戦になってしまうのか。。。
いつ彼らは押してはいけないボタンを押してしまうのかと冷や冷やします。

 

<日本の大使館>
この1年半、
否、8年余りの期間に麻布?・三田?にあるロシア大使館を訪れたことはありません。
10年位前に何度か前を通ったぐらいです。
その時から警察による厳重や警備や、侵入を防ぐ路上設置のゲートがあったりと、物々しい雰囲気のある入り口でした。
反日感情が高まっていた中韓の大使館前も似たような雰囲気はありました。
しかし、暴動が起きるわけでも、人が何かを訴えて立っていることもなかったです。
日本は幸か不幸かその行動を良しとしなかったのでしょう。

 

エストニアの大使館>
しかしエストニアは違います。
ロシア大使館前の歩道にはライブ会場で見るようなゲートが設置されたいます。
そのゲートには様々な写真や、横断幕、掲示物が掲げられています。
(歩道は封鎖されていませんが非常に通りにくいです。)
エストニアではこの行動は良しとされているのでしょう。ある程度の時間経過を掲示物から感じられました。
そしてゲートの横には駐車された警察車両。
日本のように建物があり、外壁に守られているわけではないです。
車道があり、歩道があり、すぐに建物の入り口があります。
言ってしまえばすぐに侵入できてしまいます。
しかし大使館の壁も、ガラスもきれいでした。
大使館だけきれいと言う訳ではないので、汚されてペンキで上塗りした・掃除したと言う訳ではなさそうです。
物の投げ込みも破壊行動も起こらなかったのでしょう。
ただ掲示物でもって訴える。
なんて自制のきいた行動なのでしょう。

 

<日本とエストニアの捉え方>
エストニアは日本と違います。
日本のように「かつて戦争した相手だし、一部占領されているけど、実際大きな被害って受けてないから気を付けたいけどよくわからない隣人」程度の認識ではありません。
「ネガティブな話?墓地で話せばいいかな?」ってジョークを言うくらいネガティブなイメージが多いようです。
やらかしたことは多いけど、やってくれたことって少ない。
長きにわたって虐げられた。
そんな相手の感情です。
簡単に許せるはずがないです。
そしてエストニア人にとってウクライナは重なる部分があるのでしょう。
NATOに入っていたか、いないかの差だったのかもしれません。
そんなエストニア人が暴力行為は起こさなかった(実際は知りません)。この事実がすごいと思います。

 

ウクライナはずっと近い>
国民の20%がロシア人であることもあるかもしれませんが、公共機関では国旗+ウクライナの国旗が掲げてあります。
当初からずっとです。
エストニア人のこの戦争の重大さが街中に現れているようです。
現に、義実家の隣人はウクライナ人です。
一人は長年エストニアに住んでいます。(多分エストニア人と結婚したのだと思います)
その人の兄弟はウクライナにいます。どこに暮らしていたのかはわかりませんが、去年の秋ごろに一時避難をし、現在はエストニアで職業支援を受けながら隣人宅で暮らしています。
彼らの表情には見ている限りでは不安も恐怖もありません。
でもどれだけの思いが溢れているでしょう。
もしかしたら故郷の景色が変わっているかもしれません。
とてつもない恐怖です。私には想像がつきません。

 

掲示物の中身>
まずウクライナ国旗があります。
平和や戦争反対の張り紙が多く貼られています。
今回の侵略戦争の概略をまとめたものが貼られています。
生き物、ペットを守れという掲示物もありました。
大統領を揶揄するものもありました。
そして、見るに堪えない、日本でも2月3月にTVで流れたような凄惨な写真が多く掲示されています。モザイク処理はされています。だとしてもその周辺写真を見るだけでも、内臓をつかまれたような鈍い痛みを覚えます。
現実から目を逸らすべきなのでしょうか。あれは私達とは違う場所の話でしょうか。私達には何の関係もない物なのでしょうか。
私は違うように思います。
かといって何かができるわけではないです。
せめて、起こったことの簡単な流れだけでも知っておきたいと思います。
日本から見たもの、エストニアから見たものを少しでも覚えておき、一日も早い解決を願います。

<<大使館正面>>

 

<<掲示物1>>

<<掲示物2>>