十二国記はいいぞ
「止水が人を集めるのは、人が減るからだ。土地には限りがある。どんなに豊かでも、どんどん荒民を集められるはずがない。集められるからには、集められただけの人間が死んでるってことだ」
そうか、と祥瓊は唇を嚙む。
「……そういうこと……」
わかっていなかったから、これまで止水に行くことを勧めるような言動をとってしまった。
「景王は何をしているの」
なぜそんな豺虎を官吏のままのさばらせておく。慶には新しい時代が来たのではなかったのだろうか。
「王は駄目だ……」
桓魋が息を吐いて、祥瓊は彼をまじまじと見る。
「駄目?」
「調停は官吏に牛耳られているという噂だな。前の王もそうだった。国がどうなろうと構わないんだろう。だから、どんな管理がいようと気にしない」
「なぜ誰も、王にそれを言わないの?」
桓魋は呆れたように目を丸くする。
「王に言う?」
「諫めないといけないわ、それが本当なら。それともそれは、王が傀儡として使われているってこと?だとしても誰かが景王の目を覚まさせないといけないわ」
「あんた」
「たとえ国がどういう状況なのか景王が知らないのだとしても、その報いは必ず景王に返るのよ。知らなかったじゃ許されない。力が足りなかったじゃ、許されないわ。誰かがそれを教えないと」
祥瓊のようになるだけだ。あるいは祥瓊の父親のように。
風の万里 黎明の空(下) 14章より引用
月の影 影の海
風の万里 黎明の空
が読みやすくておすすめです。